世界で最も有機農業が進み、今注目すべき国はどこかと問われた時にあなたならどう答えますか。
日本ではあまり知られてはいませんが、実はキューバは世界でも類を見ない有機農業先進国です。
キューバの耕作地はサトウキビと放牧地を除くと約190万ヘクタールありますが、この8割が有機や減農薬・減化学肥料の環境保全型で営まれているのです。
キューバ旅行でこれらの農業について学ぶツアーも企画されていて、好評を博しています。
キューバの農業事情
キューバの有機農業の歴史は、まだ日が浅いものです。
90年までは遅れた発展途上国といったイメージとは裏腹に、筋金入りの近代農業が追及されてきました。
灌漑設備が整った数万ヘクタールの大規模農場を旧ソ連製の大型トラクターが走り回り、飛行機が空からコメの種もみを撒く。
大量の農薬と化学肥料が散布されていました。
栽培品目はサトウキビ・かんきつ類・タバコ・コーヒーなど換金作物が大半、でこうした農産物の輸出で得た外資で生活物資の大半を輸入するという、国際分業論を絵にかいたような国づくりを進めてきたのです。
大胆な有機への転換が成功した背景には、技術の裏付けがあります。
キューバは土が痩せ病害虫の発生も多く不利な条件でしたが、1955年の革命以来大学まで無料の教育制度を作り人材育成に力を注いできました。
農業関連だけでも多くの研究機関があり、バイオテクノロジーや医薬品の開発は先進国に匹敵します。
これらの人材や技術が有機農業の技術開発へ動員されたのです。
日本で応用できることも多い
世界の農業は今経済のグローバル化と、新自由主義経済による国際分業によって翻弄されています。
しかし地球は生態的には閉鎖系で、石油やその他の地下資源もやがては枯渇することを考えれば、キューバが経験した出来事は日本を含めて、どこの国もいずれは直面する事態といってもよいでしょう。
そのときいち早く閉塞状況を切り抜けつつあるキューバは、人類の未来にとって明るい希望をもたらす存在といっても過言ではありません。
有機の取り組みについても、日本ではこれまでほとんど紹介されていませんが、欧米ではよく知られていてキューバの有機NPOはもう一つのノーベル賞と言われている、ライト・ライブリーフッド賞を受賞しています。
キューバの有機の基本はあくまで高付加価値の開発ではなく、自給にあることにあります。
その国に住んでいる人たちがその土地でできたものを食べること、それが一番安くつくし健康につながるのです。
日本でも付加価値ばかりに目を奪われないで、食糧自給率をキューバに見習って高めていかなければなりません。